中堅・中小企業の労働問題等の企業法務で弁護士をお探しなら愛知県名古屋市のアクシア法律事務所へ。依頼者の皆さまにとって「価値のある」リーガルサービスを目指します。

〒460-0002 名古屋市中区丸の内三丁目6番27号EBSビル5階

052-955-3151

みなし残業代、固定残業代③ ~定額残業代に関する裁判例2~

 みなし残業代、固定残業代などの定額残業代制について判断した重要な裁判例として、テックジャパン事件判決(最一小判平成24年3月8日)があります。

 この判例は、人材派遣会社に勤務する労働者が、使用者に対して残業代を請求した事案です。人材派遣会社は、従業員に対して基本給41万円が支給されており、本件労働者と使用者との間では「月間総労働時間が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき1時間当たり2500円を別途支払い、月間総労働時間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間当たり2920円を減額する旨の約定」がありました。

 この裁判の争点は、
①月間180時間以内の労働時間中の時間外労働(例えば1日8時間を超えて働いた分)に対する割増賃金が基本給に含まれているかどうか。
②また、月間180時間以内の場合には、残業代を支払わないという契約をしている以上、180時間以内の割増賃金については、残業代をもらう権利を放棄しているといえるかどうか。という2点でした。

①については、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別できないと認定し、その上で、高知県観光事件判決を引用して、前記のような約定があったとしても、すべて割増賃金を支払うべきであるという判断をしました。
 月180時間以内の労働時間の場合には残業代を支払わないという固定残業代制度を定めている本件の約定は、効力を生じないと判断しているのです。
この判決でも、高知県観光事件判決と同様、定額残業代制度が有効になるための要件として、「通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することができること」が必要とされています。

②について、労働者による賃金債権の放棄がされたというためには、賃金放棄の意思表示があり、それが当該労働者の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならないところ(最二小判昭和48年1月19日・民集27巻1号27頁参照)、雇用契約の締結の当時又はその後に時間外手当の請求権を放棄する旨の意思表示をしたことを示す事情がないこと、毎月の時間外労働時間数をあらかじめ予測できないこと等から、自由な意思に基づく時間外手当の請求権を放棄する旨の意思表示があったとはいえないと判断しました。

 ここまでのこの判決自体は、以前の裁判例を確認するものでそこまで重要なものではないのですが、櫻井龍子裁判官の補足意見が後の裁判例に少なからず影響を与えています。
 この櫻井裁判官の補足意見については次回のコラムで解説します。

弁護士 山田亮治

Comments are closed.